私の彼は常にアンテルミッタン・デュ・スペクタクル(非常勤芸能従事労働者)
の認定の元でフランスのアニメ業界で働いている。
これはフランス独特の芸術家を守る保険で、職業ごとに決められた時間数がありそれを
超える時間働くと、認定された芸術家となる。
常に失業保険のようなものに守られているような感じで、国からの手当がある。
たとえば、アニメの仕事(仕事は一日約8時間)と俳優の仕事(短期集中の仕事)やミュージシャン
(1日に数時間の仕事ライブなど)では全く働く時間数というのが違う。
一年に何時間か、その各認定を越す時間を働く。
ちなみに認定を出せるライブハウスやクラブや劇場や会社というものはちゃんと納税している正式な場なので、アンダーグランドじゃダメなんだ。
なので、フランスはアンダーグランドミュージックシーンというのがドイツに比べて少ないと思う。
友人の旦那で
パリで働くパーカッショニストのミュージシャンは、半プロ。このアンテルミッタン・デュ・スペクタクルで
1200ユーロほどもらい、認定の時間数を働く為に、毎週ライブをして、ある時は演奏旅行に出かける。ちゃんとしたライブハウスや劇場やらホテルなどでの演奏でないといけないし、
結構忙しい。出演料ももらうが、バンドの人数が8名と多いので、ライブでのお金はたかがしれている。
なので、このミュージシャンにはアンテルミッタン・デュ・スペクタクルは彼に取っては生命線なんだ。
日本でだったら、こういうミュージシャンはアルバイトをやりながら音楽活動をするっていう感じだと思う。日本で続けられるのは独身の若い時だけだろうね。
フランスはきちんと呼ばれる場所があれば、このアンテルミッタン・デュ・スペクタクルと
出演料で生活できるので、ある程度年が上の人も居るし、結婚していたり、子供がいる人も居る。
数多くいる中堅どころの芸術家が、フランスの芸術文化、そして経済を支えているという国の認識だったんだよ。
ドイツは皆うけられる最低保証生活の失業保険があって、それは大体600ユーロほどで、何年でも受けられ、ハードルなども無いので、
それをもらって、制作活動をする自由人がたくさんいる。
本当に超貧乏な芸術家がたくさんいる。
なので、アンダーグランドな芸術活動が活発だ。
そういう人はお金をあまり必要としない豊かな生活を目指しているという感じだね。
でもこれでは家族や子供を持つのは厳しいけど、中には子供がいる人ももちろん居る。
あるシングルマザーで子供が一人居るお母さんは国から800ユーロの補助金をもらっていた。
子供が増えるごとにこの補助金も増える。
これはドイツの社会主義的な思想が根底にあって、人間は必要最低限な生活権利を誰でも
国から受けられるということだし、お金とは関係ない社会的役割を持つ人もドイツにはたくさん居る。
それは私が感じた事だけど、お金とは関係ない社会的役割っていうものの大切さを
ドイツの国家自体が大切にしているところなんだよね。
実際はこの600ユーロっていうのはかなり生活する限界
のお金で、それを長くもらうと、人生が凄く大変になるので、どこかで切り上げて、
普通の人は働き始める。
が、この600ユーロとブラックと言われる手渡しでお金のやり取り
で生活出来てしまう人も居て、(移民が多い、これを目当てにドイツに長く居る)これがドイツの問題。
私がベルリンに居るときに知ったパレスチナ難民の人がこの失業保険の600ユーロと自転車を盗んで、売ってという事を
していたそうだし、もう一人のモロッコ人のおじさん(40年前にドイツに来た)もこのお金とチョコ(モロッコ産のもので食べるものではありません)を売って生活していたそうだし、
ある業界では有名な日本人のドイツ人の旦那さんもこの失業保険と草のバイヤーをしていたらしく。
たまたま、私の元カレがこのドイツ人の旦那さんと子供の頃からの友人で、そのバイバイをする
建物に行ったらしい。基本的には彼のアトリエでね、ほ〜〜お〜〜、こういう風にバイバイされるのか、まあ外国映画でよく再現されているけど、同じ感じだったらしいね。
奥さんは今、日本でもドイツでも有名人になったので、辞めていたら良いな〜と思う。
というように、結構軽◎●の温床なんですよね。。。。。。
話をフランスに戻して。。。。。
このフランスの制度は、きちんとした能力が無い限り、おのずど続けられない様になって、続けられる能力のある人は、芸術や音楽でも人並みの生活が出来ているので、良いシステムだな〜と思っていた。
が、現在存続の危機だそうで、無くならないにしても内容がかなり厳しくなるらしい。
私は、どんなに厳しくなるのか解らないけど、私の彼はこれを利用し、それで普通の人間としての
生活が成り立っているので、ちゃんと働いている人の事をちゃんと考慮してほしいなと思う。
ハッキリ言って、フランスの普通に働いている人の失業保険の改革(これをもらう為にわざと働いたり働かなかったりしている人がゴマンと居る)をしたほうが良いと思うのだが、
それをすると、選挙に響くので、やらないんだろうね。絶対数、多くの人に関わることだからさ。
芸術家はやはり少数派なので、こういうところからメスが下るのだろうね。
アニメの業界で働いて、常に安定的に職があるというのは、本当に大変なのである。
例えば、ある1年のアニメシリーズで働いていたとしても、(一年つづくか解らないが)
ある月は、他の部署の仕事が終わらなくて、自分の仕事がその後からじゃないと始められない事もあり、休みになることがある。
それもいきなり、予定より押していて、明日から休みだから(給料無しになる)。。。。なんて言われて、そんな無茶クチャな。。。ということもあるんだよ。
いつでも臨機応変にしていないと行けない。
普通の人が今まで働いていたがいきなり明日から休業、いつ始まるか解らない。給料も出ないじゃあ
こまっちゃうでしょ。
それで、このアンテルミッタン・デュ・スペクタクルの出番で、
さっそくその明日からの失業保険(給料の約8割)が速攻で出て、普通に次の月の給料に払われる訳。
それで例えば、その休み(無給)
が1週間だろうが、2週間だろうが、解らない時がある。
その時は待機なんだけど、その待機分がきちんと出て、安心して生活できるんだよね。
まあこのアンテルミッタン・デュ・スペクタクルに認定される為に働かなきゃいけない時間数が、
ちゃんと働いていないと消化出来ない時間でね、私の彼は今年大変だったんだよ。
前回は一つアニメのプロジェクトが終了し、次のプロジェクトがなかなか見つけられず、(そんなにたくさん新作アニメがある訳じゃない)探しに探してその後、週4日で働く簡単なアニメのデザインの仕事が見つかり、この認定からあやうく落ちそうになった。
11月までに、新しいプロジェクトのメンバーになれなければ、霞みでも食べて行きて行かなきゃ行けないかもしれない状況だった。
それが、ラッキーにも7月中旬からのフルタイムのストーリーボーダーの仕事の以来が直接来て、
首の皮一枚で繋がった。
そんな危ない橋を渡りながらも、人並みの生活が出来るこの制度に感謝している。
日本のアニメーターの給料はかなり低いと聞く。
それじゃあアニメ業界で働いたと決めたら、
家庭や子供も持つなと言っている様なもん。
でもその人たちの働きが合って、いろんな事業やビジネスが出来て周りの人が生活しているんだよね。
たとえば、あるアニメがすっごい爆発的に人気になり、会社やプロデューサーとか原作者が儲かったりしてね。
そのアニメグッズを発売して、おもちゃ会社が儲かって、10年、20年と人気が持続したとしても
そのアニメを製作したアニメーターにはびた一文も入らない。それが現在のクリエーターの置かれている位置なんだよね。たとえば、未だ伝説的な80年代、90年代のアニメを作った人たちって凄い情熱的に給料が安い中で、生活できるか出来ないかで働いた人なんか多いと思うんだ。
でもその一方で、未だにそのアニメで20年、30年、お金を儲けている人ががたくさん居る訳ね。
クリエーターは絵描きだからそれで良いなんて事は無い!決して。
彼はストーリーボーダーという役なんだけどね、日本だったら監督がやる役割で、画面構成を考え、人の動き、画面の流れを考え、表情いろんな事を考えて、すっごく想像力が必要なんだ。
アニメは業界になって、ビジネスにはなっているけど、やはり作り手というのは、多大なリスクを背負って行きているっていう事ね。
それで、アンテルミッタン・デュ・スペクタクルの制度を利用してなんて、悠々自適なんて利用できるほど、
悠長ではないって事。
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